双極性障害(躁うつ病)

双極性障害(躁うつ病)とは

双極性障害は、気分が高揚し活動的になる躁病エピソードと、抑うつ気分が続き意欲が低下するうつ病エピソードの二つの気分の波を生じる疾患です。
最初の症状は躁病、軽躁病(躁病より期間が短く躁病ほど激しくない)、抑うついずれかで始まります。そのため抑うつで始まった方はうつ病にみえ、うつ病として治療を行っていく中で軽躁状態が明らかになり診断が変わることもあります。
また、躁病とくに軽躁はご自身が症状として自覚されておらず、長年双極性障害の診断がつかないということもあります。

双極性障害(躁うつ病)の原因

双極性障害はこれまでうつ病と同じように、気分に異常をきたす疾患の一つとして分類されていましたが、DSM-5という最新の診断基準ではうつ病を含む「抑うつ障害群」とは明確に分けて「双極性障害および関連障害群」として独立しています。
それは、症状や家族歴、遺伝的体質の点から両者は異なる点が大きいからです。双極性障害はうつ病など他の精神疾患と比較して、遺伝的体質の影響が大きいと考えられています。特定の原因遺伝子が見つかっているわけではないですが、双極性障害の家族歴は発症要因の一つになります。
うつ病ほど原因についてわかっていないことが多い双極性障害ですが、重度のストレス睡眠不足が続く環境産後などが誘因として影響することもあります。

双極性障害(躁うつ病)の症状

躁病エピソードの症状

躁病エピソードでは気分が高揚し開放的になります。怒りっぽくなる方もおられます。さらにやる気がみなぎった状態になり活動的になります。このような状態が一日中、一定期間(躁病エピソードでは少なくとも1週間、軽躁エピソードでは少なくとも4日間)続きます。

  • 気分が高揚し開放的になる
  • 怒りっぽくなる
  • やる気がみなぎった状態になり、活動的になる
  • 自尊心の肥大
  • 少ない睡眠時間でも十分に休めたと感じる(睡眠欲求の低下)
  • しゃべり続ける(多弁)
  • 次々と考えを思い付き話の展開に周囲がついていけなくなる(観念奔逸)
  • 仕事や趣味、家事などをやりすぎてしまう(目的指向性の活動)
  • 危険であったり馬鹿げているように見える活動に熱中する(投資や高額な買い物を続けるなど)


これらの症状が激しければ仕事や社会生活において困難を抱えるようになり、家庭や職場の人と揉めることが増えてきます。双極性障害Ⅰ型といいます。
一方の軽躁エピソードでは仕事や社会生活における影響がでるほど重篤ではありません。こちらは双極性障害Ⅱ型と呼びます。

うつ病エピソードの症状

うつ病エピソードでは①抑うつ気分②興味や喜びの喪失の少なくとも一つを認め、食欲の低下(または増加)、不眠(または過眠)、疲労感、無価値観、罪責感、集中力の低下、決断困難、自殺念慮などを認めます。
これらはうつ病の症状とほぼ合致しており症状だけからうつ病であるか双極性障害のうつ病エピソードであるかの鑑別は困難です。

双極性障害(躁うつ病)の治療方法

双極性障害の治療は薬物療法心理社会的療法があります。

薬物療法

双極性障害の薬物療法では気分安定薬という薬を使います。中でも最も効果のある薬はリチウムという薬です。リチウムは躁状態に対する効果とその後の再燃予防に対する効果があります。

リチウムを服用する際に大切なことがあります。それは定期的にリチウムの血中濃度を確認することです。というのも、リチウムの効果の出る濃度と中毒になる濃度が割と近いのです。
そのため中毒になっていないかや副作用が生じていないかを確認するため、半年に一度腎機能や甲状腺機能と同時にリチウムの血中濃度を確認します。
ご高齢の方や併用注意の薬剤を内服されている方に対してはもう少し頻回に血中濃度を測定することが必要です。

その他にバルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンなどの気分安定薬抗精神病薬睡眠導入剤などを病態に合わせて使用します。

心理社会的療法

心理社会的療法では病気について正しく理解していただくこと、規則正しい生活習慣を送ること、運動習慣を作ること、過度な飲酒を避けること、誘因となりうるストレスマネジメントなどが大切です。
いずれも病気の再燃を防ぐには重要です。
特に病気について知ることで服薬する目的を知り、適切な内服習慣を作ることに繋がりますので、患者さんには正しく病気について知っていただくことを心がけております。