パニック障害(パニック症)とは
パニック障害とは、DSM-5では不安症群に分類される疾患で、突然起こるパニック発作を繰り返すことを特徴としています。パニック発作は突然始まり数分以内にピークに達し、動悸や息苦しさ、窒息感、発汗等の症状を伴っています。1/4-1/3の方は夜間にパニック発作を認め、パニックの状態で目が覚めます。このパニック発作は「死んでしまうのではないか」「どうにかなってしまうのではないか」という強い恐怖を伴う症状のこともあります。
このように突然パニック発作を起こすため、患者さんは「また発作がおこるのではないか」と不安になり、パニック発作を来しやすいような状況をさけるようになります。
疫学的には20歳から30歳頃の発症が多く、女性の方が男性と比較して2~3倍多いです。また発症年齢のピークは男性は25歳から30歳頃、女性は30歳~35歳頃です。
パニック障害(パニック症)の原因
パニック障害の明確な原因はわかっておりません。いくつかの説がありますが、パニック障害の方では二酸化炭素を検知する脳幹の化学受容体が敏感になっているということがわかっています。そのためこの化学受容体が「二酸化炭素が増えている」と反応すると過呼吸で酸素をたくさん取り込もうとしているのではないかと考えられています。また不安や恐怖などの感情に関連している扁桃体と呼ばれる部分が過敏になっており、予期不安につながるのではないかと考えられています。カフェインとの関連も指摘されています。
パニック障害(パニック症)の症状
パニック障害は突然、激しい恐怖や不快感を伴ったパニック発作がおこりますが、その際には以下のような症状が起こります。
- 動悸、心悸亢進、心拍数の増加
- 発汗
- 身震いや震え
- 息切れ感や息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛、胸部の不快感
- 嘔気、腹部の不快感
- めまい感、ふらつく感じ、気が遠のく感じ
- 寒気、熱感
- 感覚麻痺やうずき感などの異常感覚
- 現実感の消失、自分の意思と体が分離しているような感覚
- 「どうにかなってしまう」ことに対する恐怖
- 死に対する恐怖
このような症状がパニック発作時に出現します。慌てて救急車を呼ぶことがあるかもしれません。それほど耐え難い恐怖を伴います。検査では異常は見つからないため様子を見ていると再びパニック発作が起こり、発作を繰り返すうちに、「また発作がおこるのではないか」という予期不安が起こるようになります。この予期不安から、助けを呼べない状況を避けるようになったり、一度発作を起こした場所を避けるようになることがあります。結果、普段の活動を制限することになり、就労や通学に影響が出ます。
パニック障害(パニック症)の治療方法
パニック障害の治療は薬物療法と精神療法です。
薬物療法
パニック障害の治療ではほとんどの方で薬物療法を行います。通常SSRIと呼ばれる抗うつ薬を使用します。パニック障害の患者さんは生活が思うように送れなくなり不全感を感じている方が多くいらっしゃいます。SSRIには不安感を軽減する作用がありますので、薬の効果を感じて頂きながら、生活を立て直していくことが目標となります。服薬に際しての注意点については診察時に説明し、安心して服薬頂けるようにご説明させていただきます。
精神療法
パニック障害では心理教育が大切です。患者さんはパニック発作の症状に圧倒され、「何か重大な疾患があるのではないか」「このまま死んでしまうのではないか」などの不安を感じておられると思います。決してそのようなことはなく、発作時の激しい症状は自律神経の急激な緊張によって引き起こされていることなど、疾患について正しく理解していただくことが重要です。薬物療法と心理教育を行い、患者さんの回復力を引き出していけるように心がけて精神療法を行います。