軽度認知機能障害(MCI)

軽度認知機能障害(MCI)とは

軽度認知機能障害(以下MCI:Mild cognitive impairment)とは、生活上は問題はないものの、ご本人や周囲の人が認知症のような症状(「認知症の症状ー総論」の障害されやすい6つの神経認知領域を参照)があることに気づいてる状態のことです。このMCIは必ずしも認知症に進行するわけではありません。MCIと診断された方が1年後に認知症に進行するのは約10%程度で、14~44%は回復するとされています。

軽度認知機能障害(MCI)の原因

MCIは臨床的な状態像の概念であり、病名ではありません。そのためMCIに特有の原因があるわけではありません。うつ病や糖尿病、外傷、脳血管障害など様々な疾患によりMCIの原因になります。MCIの中でも記憶障害のあるタイプ記憶障害のないタイプに分類すると記憶障害のあるタイプではアルツハイマー型認知症に移行する例が多いとされています。

軽度認知機能障害(MCI)の症状

記憶障害のあるタイプのMCIは同じ話を繰り返すようになったということで周囲の人が気づくことが多くあります。他に、今何をしようとしたか思い出せないことが増えたり、最近の出来事を忘れているということも出てきます。

記憶障害のないタイプのMCIでは性格が怒りっぽくなったり疑い深くなるなど性格の変化として現れることや、外出しなくなり引きこもりがちになったり、これまで長年楽しんできた趣味をしなくなるというような意欲の低下として現れることもあります。

軽度認知機能障害(MCI)の治療方法

MCIに保険適応が得られている治療薬は現時点ではありません。症状の現れ方や画像検査結果などから将来アルツハイマー型認知症に移行する可能性が高いと判断できるケースでは早い段階から抗認知症薬の導入をお勧めすることもあります。

薬物療法以外では運動療法や規則正しい生活、人とのコミュニケーション等の様々な作業療法も効果があります。診察の中で生活について積極的に話題にし、より認知機能に良い影響を与える暮らしについてお話してきたいと考えています。MCIの段階でこまめな観察と生活習慣の見直しなど行い、認知症への進展に対する予防や備えが重要です。